目次
  1. 01|筋肉痛が軽くなることと、筋肉が回復することは違う。
  2. 02|2026年研究では、マッサージが筋肉痛を軽減した。
  3. 03|筋力や運動能力の回復では、別の方法が優位だった。
  4. 04|マッサージの効果は、いつまで続くのか。
  5. 05|筋トレ後の回復には、マッサージをどう取り入れるべきか。

SPORTS MASSAGE, MUSCLE RECOVERY & PERFORMANCE

ハードな筋力トレーニングを終えた翌日。

太ももが張る。階段を下りるのがつらい。胸や背中に筋肉痛が残っている。

そんなとき、マッサージを受けると身体が軽くなったように感じることがある。

では、その感覚は、実際に筋肉の回復が早まっていることを意味するのだろうか。

2026年5月、運動後の回復方法を比較したシステマティックレビューとネットワークメタ解析が発表された。

研究チームは、マッサージ、冷水浴、軽い運動などが、筋肉痛や運動能力の回復に与える影響を検証した。

その結果、マッサージは運動直後から24時間後までの筋肉痛を軽減する方法として、有望な結果を示した。

一方、ジャンプ能力などの回復では、別の方法が優位だった。

つまり、筋肉痛が軽くなることと、筋肉の機能が回復することは、必ずしも同じではない。

筋トレを習慣にしている人ほど知っておきたい、マッサージと筋肉の回復の関係を見ていこう。


01|筋肉痛が軽くなることと、筋肉が回復することは違う。

SORENESS IS NOT THE SAME AS RECOVERY.

筋トレ後の回復を考えるとき、まず区別したいことがある。

それは「痛み」と「筋肉の機能」だ。

例えば、スクワットをした翌日に太ももが痛くても、必ずしも筋力が大きく低下しているとは限らない。

反対に、筋肉痛がほとんどなくても、筋力や瞬発力が十分に回復していない場合もある。

運動後に起こる代表的な反応のひとつが、遅発性筋肉痛(DOMS)だ。

これは、慣れない運動や強い負荷、とくに筋肉が伸ばされながら力を発揮する運動の後に生じやすい。

一般に、運動後しばらくしてから痛みが現れ、24〜72時間程度で強くなることがある。

ただし、筋肉痛の強さだけで、筋肉の損傷程度や筋肥大の効果を正確に判断することはできない。

今回の2026年研究でも、筋肉の回復をひとつの指標だけで評価していない。

研究チームが調べたのは、主に次の3つだった。

  • 筋肉痛の程度
  • ジャンプ能力の回復
  • 血液中のクレアチンキナーゼ(CK)の変化

CKは、強い運動などによって血液中の濃度が上昇することがある酵素だ。

筋肉への負荷を調べる参考指標として使われるが、数値には大きな個人差があり、筋肉の損傷や回復を単独で正確に示すものではない。

筋肉痛、運動能力、血液指標。

この3つを分けて考えることが、今回の研究を理解する鍵になる。

02|2026年研究では、マッサージが筋肉痛を軽減した。

WHAT THE 2026 RESEARCH FOUND.

2026年5月に発表された研究では、運動後のさまざまな回復方法を比較した。

研究手法には、複数の研究結果を統合し、直接比較されていない方法も含めて効果を推定する「ネットワークメタ解析」が用いられた。

検証された主な回復方法は、マッサージ、冷水浴、軽い運動などだ。

研究チームは、運動後0〜24時間の急性期と、48〜72時間の遅延期に分けて効果を調べた。

その結果、筋肉痛の軽減について、マッサージは運動直後と24時間後の両方で、何もしない場合より良好な結果を示した。

特に24時間後の筋肉痛については、標準化平均差(SMD)が−2.616だった。

これは、比較対象に対して筋肉痛の評価が低かったことを示す数値だ。

ただし、SMDは痛みが何割減ったかを示す数字ではない。

また、研究間のばらつきがあり、推定値の信頼区間も広かったため、すべての人に同じ大きさの効果が得られるとはいえない。

それでも、今回の研究では、マッサージが運動直後から翌日にかけての筋肉痛を和らげる可能性が示された。

これは過去の研究結果とも、おおむね一致している。

2020年に発表された29研究、計1,012人を対象とするメタ解析でも、マッサージによって筋肉痛が小さいながらも有意に改善することが報告されていた。

マッサージには、筋トレ後の痛みや不快感を軽減する役割が期待できる。

ただし、それが筋肉そのものの修復を直接早めたことを意味するわけではない。

03|筋力や運動能力の回復では、別の方法が優位だった。

PAIN RELIEF VERSUS PERFORMANCE.

今回の研究で興味深いのは、回復方法によって得意な効果が異なっていたことだ。

筋肉痛の軽減では、マッサージが有望だった。

しかし、ジャンプ能力の回復では、軽い運動によるアクティブリカバリーが良好な結果を示した。

アクティブリカバリーとは、完全に休むのではなく、ウォーキングや軽い自転車運動など、低強度で身体を動かす回復方法だ。

研究では、運動24時間後のカウンタームーブメントジャンプの回復について、アクティブリカバリーが対照群より良好な結果を示した。

一方、マッサージが同じようにジャンプ能力を回復させるという明確な証拠は得られなかった。

また、血液中のCKについては、冷水浴が運動直後と24時間後の数値を低下させる結果を示した。

つまり、研究全体では次のような違いが見られた。

筋肉痛を和らげたい場合

マッサージや冷水浴が有望。

瞬発的な運動能力を回復させたい場合

軽い運動によるアクティブリカバリーが有望。

CKの上昇を抑えたい場合

冷水浴で一定の効果が見られた。

ただし、これらは研究を統合した結果であり、回復方法同士の優劣がすべて確定したわけではない。

また、CKの数値が低いことが、必ずしも筋肉の修復が早いことを意味するわけでもない。

2020年のメタ解析でも、マッサージが筋力、ジャンプ、短距離走、持久力を直接改善するという明確な証拠は得られていなかった。

身体が楽になったという感覚と、次のトレーニングで力を発揮できる状態は、分けて考える必要がある。

マッサージは、筋肉の回復に関わるすべての指標を改善する万能な方法ではないのだ。

04|マッサージの効果は、いつまで続くのか。

THE FIRST 24 HOURS MATTER.

今回の研究では、回復方法の効果が現れる時間帯にも違いがあった。

マッサージによる筋肉痛の軽減は、運動直後から24時間後までの期間で確認された。

一方、48〜72時間後になると、多くの回復方法で追加的な効果は小さくなった。

これは、時間の経過とともに身体が自然に回復していくことも関係していると考えられる。

筋肉痛は、通常、数日かけて徐々に軽くなる。

十分な回復時間を確保できる場合、特別な施術を行わなくても、自然に改善していくことは少なくない。

一方、翌日もトレーニングを予定している人や、短い間隔で競技に参加する人にとっては、筋肉痛を少しでも軽減できることに実用的な意味がある。

ただし、過去の研究では、マッサージによる筋肉痛の軽減が48時間後や72時間後にも認められた例がある。

そのため、「24時間を過ぎたらマッサージは無意味」と結論づけることはできない。

研究ごとに、施術の方法、時間、対象者、運動負荷などが異なるからだ。

今回の2026年研究は、回復方法を選ぶときに、目的だけでなくタイミングも考える必要があることを示している。

なお、強い筋肉痛がある部位を無理に押したり、痛みを我慢して強い刺激を加えたりする必要はない。

マッサージを受ける場合は、身体の状態に合わせて、心地よく感じられる範囲で行うことが大切だ。

05|筋トレ後の回復には、マッサージをどう取り入れるべきか。

BUILD A SMARTER RECOVERY ROUTINE.

では、筋トレを習慣にしている人は、マッサージをどのように取り入れればよいのだろうか。

まず考えたいのは、何を回復させたいのかということだ。

筋肉痛が強く、身体の張りや不快感を軽くしたい。

そのような場合、マッサージは有力な選択肢になる。

一方、翌日のトレーニングで筋力や瞬発力を発揮したいのであれば、マッサージだけに頼るべきではない。

トレーニング負荷の調整、十分な睡眠、適切な栄養摂取、軽い身体活動なども重要だ。

特に、筋肥大を目的とする場合は、回復のための習慣と、筋肉を成長させるための条件を分けて考える必要がある。

マッサージによって筋肉痛が軽くなったとしても、それだけで筋肥大が促進されると証明されたわけではない。

また、フォームローラーやマッサージガンなどのセルフケア器具も、施術者による手技と同じ効果があるとは限らない。

2023年に発表されたフォームローラーなどの研究をまとめたメタ解析では、筋肉痛や筋力回復に対して、何もしない場合より明確に優れているという結果は得られなかった。

そのため、器具を使う場合も、身体が楽になる感覚を参考にしながら、無理のない範囲で取り入れることが望ましい。

日常的に筋トレをしている人であれば、次のように考えるとわかりやすい。

筋肉痛を和らげたいときは、マッサージ。

軽く身体を動かして回復を促したいときは、ウォーキングなどの低強度運動。

そして、筋肉の適応や成長を支えるためには、十分な食事と睡眠、適切なトレーニング計画を優先する。

マッサージは、筋肉の回復を支える選択肢のひとつであり、回復そのものを置き換えるものではない。

目的に合わせて取り入れることが、賢いリカバリーにつながる。

REFERENCES|参考文献・出典

  1. Acute and Delayed Effects of Post-Exercise Recovery Strategies on Explosive Performance and Markers of Muscle Damage: A Systematic Review and Network Meta-Analysis. (2026).

    運動後のマッサージ、冷水浴、アクティブリカバリーなどを比較したシステマティックレビュー・ネットワークメタ解析。

    PubMed PMID: 42194413

    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42194413

  2. Davis HL, Alabed S, Chico TJA. (2020).

    Effect of sports massage on performance and recovery: a systematic review and meta-analysis.

    BMJ Open Sport & Exercise Medicine, 6, e000614.

    https://doi.org/10.1136/bmjsem-2019-000614

  3. An Evidence-Based Approach for Choosing Post-exercise Recovery Techniques to Reduce Markers of Muscle Damage, Soreness, Fatigue, and Inflammation: A Systematic Review With Meta-Analysis. (2018).

    Frontiers in Physiology.

    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29755363

  4. Acute effects of foam roller or stick massage on indirect markers from exercise-induced muscle damage in healthy individuals: A systematic review and meta-analysis. (2023).

    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37330781

本記事は一般的な情報提供を目的とし、診断・治療に代わるものではありません。研究結果には限界や個人差があります。編集方針・訂正方針

ABOUT THE AUTHOR

岸本 淳史

WELLNESS EDIT JAPAN 代表・編集責任者 / NSCA-CPT

株式会社Karada Works代表取締役。NSCA認定パーソナルトレーナー(NSCA-CPT)。2017年よりパーソナルジム運営に携わり、運動指導、パーソナルジム・整骨院の経営支援、ドライヘッドスパ専門店La HEADの経営など、ウェルネス分野の事業に従事。

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